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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


「…お二人とも、再会が喜ばしいのは何よりですが、そろそろ宜しいでしょうか?」

コホン、と咳払いをしてジェイドさんがいつまでもそうしている私達の間に入った。

「…ジェイド……久々の再会なんだから、もっと味合わせてくれたっていいだろう。」

「いつまでもその様にされては皆が仕事に戻れません。嬉しそうなお嬢様は微笑ましい限りですが、当人以外はもう充分かと。それに、例のものが仕上がってきております……ハイデス様の手からお渡し下さいませ。」

それは本当か、と嬉しそうにしたハイデスさんに腕を引かれた。その先で見た部屋で私は喜びと、期待と…少しの興奮を胸にこの手を引く優しそうな瞳を見た。

「え、これ……もしかして…。」

「あぁ、そうだよアンリ……全部、私から君へのプレゼントだよ。」

目の前には部屋中と言えるほどに広げられたドレスや靴、その他小物やアクセサリー達に思わず胸が踊ったが、以前街で見繕って頂いたものよりも遥かに、量が多い。

「でも、あの…こんなに、たくさんなんて…!」

嬉しい気持ちと、申し訳ない気持ちとが綯い交ざった思いで、堪らず目の前の彼の手を引いた。
すると、とても柔らかく微笑んだ黒の瞳が近付いてフワリとした浮遊感の中、傍のカウチへと運ばれてしまった。

「言っただろう?全部プレゼントだって……この前、街で見てた時に何となくではあるが、アンリの好みは把握したつもりだったから、勝手ながら追加で仕立てさせたんだ。」

街で一緒に選んだものから、初めて見るものまで、メイドさんが一枚一枚広げて見せてくれる。

流行りなのかドレスのボリュームこそそこまで大きなものではないが、ウエストで細く絞られたドレスは腰から少し膨らみを持たせ裾へなだらかに広がっている。首元は高く襟やリボンなどで装飾されてるものが多く、少しコートドレスのようなものもあった。

「それと、一番見せたいものがあってね……良かったら、袖を通してみてくれないかい?色味は同じなんだが、3着程用意しているから、気に入ったのを一度着てみて欲しい。」

そういって合わせるようにメイドさんが持ってきてくれたドレスは、チャコールグレーのような色合いで、しかし装飾も凝っていて他のドレスに比べると一段と華やかなものだった。
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