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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で



夜中、寝ているとベッドがギシリと鳴る音がして目が覚めた。

何だろうと、うっすら目を開けるとベッド端に誰か腰掛けている……月明かりに照らされて、表情こそ見えないがそのシルエットが今私が会いたいと思っていたその人だった。

「……ハイデス、さん…?」

微睡みの中で、腕を伸ばす。

「…ぁあ、ごめんね…アンリ…。寝顔だけでもいいから、一目見たくて。起こしてしまったね。」

これも、夢かなぁなんて思いながら、その聞きたかった声に嬉しくなった。
ゆっくりと手を握られて、いつもより武骨さを感じるそれを胸元へ寄せると、少し埃っぽい匂いがした。

「アンリ、汚れてしまうから…すまない、着替えも何もしていないんだ。」

そう言うハイデスさんをよく見ると、いつもと違う軍服のようなものを着ていて、髪も少し乱れている。

「良いんです…嬉しい。来てくれたんですね。」

「勿論…約束したからね。」

相変わらず、優しい笑顔に胸が暖かい気持ちになる。
まだ夢なんじゃないかという感覚の中で、その存在を確かめたくてぎゅっとハイデスさんの手を握った。

「よかった、覚えててくれて……私ばかり、寂しかったのかな…とか…」

思わず溢れてしまった想いに、少し焦ったような声色で握った手を握り返された。

「いや、そんなことは……その、なんだ…すまない、実はこうして君の寝顔を見に来るのは初めてじゃないんだ。」

まさかの言葉に、思わず目が開く。
約束忘れちゃったのかと、ジェイドさんに愚痴た時にハッキリとそんなことはありません。という答えが返ってきた事を思い出す。
そっか、ジェイドさんは全部知ってたんだ。

思わず、何回?と聞くと、言いにくそうに、4、5回は……というハイデスさんに、そんなにですか、という気持ちと…やっぱり嬉しいのと、ちょっと複雑な気持ちになった。でも、バツが悪そうに顔を逸らすハイデスさんが可笑しくて笑ってしまった。

「こんな時間にしか抜け出せないんだ……すまない、本当はちゃんと時間を作れれば良かったのだが。」

ちゃんと来てくれただけで嬉しいと、そう言ったら額に軽い口付けをくれた。
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