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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


元の部屋まで戻り、そこでハイデスさんからジェイドさんとの昔話を沢山聞いた。

学生時代、魔法学校生徒だったハイデスさんと、まだ一般教養の小学部だったジェイドさん。家柄も、魔力量も能力も持っていたハイデスさんはとにかく真面目で浮わついた話も一切無かったらしい。
ジェイドさんは元々ハイデスさんの家の領地の隣に住む小さな貴族の次男として生まれ、同じように貴族の通う学校にいたが、ある時領地が魔物に襲われ、家も家族も全て失うことになったそうだ。
ジェイドさん本人は学生寮で王都に住んでいたから助かったが、家を失くし、家族も失くした10代の貴族の子供に出来ることなど何も無かった。襲われた領地を任されたのが地理的にも近いハイデスさんの家で、その時にジェイドさんは引き取られたらしい。

自分の他に兄弟の居なかったハイデスさんは、その時弟が出来たみたいで少し嬉しかったんだとか。

ジェイドさんは使用人として引き取られる事になっていたが、貴族として生まれた人間を使用人にするなんてと、ハイデスさんが反対し兄弟のように受け入れた。

学校もそのまま貴族階級で続けさせ、魔法学校もそのまま入ったが、その時ハイデスさんが黒魔術の洗礼を受けると言い出し、家族が大反対するなかでジェイドさんは、何かあったら自分がこの家をもらってしまうぞと煽ったらしい。
しかし、ハイデスさんがその洗礼を受けると同時に、ジェイドさんは貴族の使用人として学ぶ学校をハイデスさんに内緒で平行して通い出したそうだ。

同じ使用人を長く共にしたい貴族は、自分の魔力量を分け与えて自分の寿命を削ってでも信頼する人間を側に置くことを選ぶのだが、黒魔術師になるとそれが出来なくなる。
黒魔術師の魔力を普通の人間に注ぐと大抵狂うのだ。

だから、貴族として生まれたジェイドさんは元々の魔力量が普通の使用人にするには高過ぎるが、長い時を過ごすであろうハイデスさんの隣に立つにはそれくらい無いとならず、この人の隣に居られるのは自分しか居ないと、そう思った。

元々使用人として引き取ってくれる筈だったのを、変わらぬ身分で高い水準の教育も受けさせてくれたのはハイデスさんのお陰だ。

そんなハイデスさんの為になるならなんだってしようと思っていたと、そう後に伝えられたのだと。
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