第2章 1 箱庭
ぐちゃ、ぴちゃっ……
いやに響く水音が治まった筈の体の熱を思い出させた。
一度イったとはいえ、肝心な場所には触れられていない。
刺激を求める私の中がまた蜜を垂らした気がした。
はぁはぁと息も荒くなって、湖までもう少しのところで急にズクンッと体の疼きを感じた。
「やだっ、またなの…?」
耐えられずにその場にしゃがみこむ。
ぐしょぐしょのシーツからはやはりというか、案の定愛液が滴り落ちていた。
私の体、どうなっちゃったの??
こんなところで、一人でシろっていうの?
かといって、今更キツネもいない。
考えている間も体の疼きは増すばかりで、息もどんどん荒くなっていく。
誰もみていない。ここにはきっと私しかいない。
そう、ちょっと触って満足したらまた治まる。だからちょっと触るだけ……そう思って伸ばした手を突然何かに掴まれた。
「え、っ?!」
誰かに見られた?!
そう思ったが、人の気配は無い。代わりに背景がずる、っと動いて見えた。
「なに…、っひ、いやあああああ!!」
その姿を確認すると同時に私の悲鳴が静かな森の中に木霊する。
ズルズルと音を立てて蠢くそれはいつの間に私の背後に回ったのか、巨大な身体をゆっくりと露にした。
全体像はもはや分からないが、無数の触手が伸びた体はどちらかというと植物に近い。
ツルが何重にも絡まったような形状のようだが、その間からは無数の生き物の形をした何かが出ている。
飲み込まれ、そのまま朽ち果てた屍のよう。
人の体らしきものが無いだけ幸いだが、飛び出た何かは豚のようなものから鹿、爬虫類まで様々だった。
死体かと思ったが、よく見ると石化している。
なんなのこれ……
こんな恐ろしいものがいる場所で私は生活してたの???
ズルズルと私の腕に巻き付くツルが増えていく。
「や、!いやっ、やだあああ!!」
やだ、やだ、殺される。
こんなところで死にたくない。こんなやつに殺されたくない!!
しかし私の抵抗も空しく両手両足、腰までを拘束されるともう成す術もない。
無理に動こうものなら関節があらぬ方向へ曲がりそうだと悲鳴をあげる。
やだやだ、こんなことならキツネに襲われておくんだった。
こんなのに殺されるくらいなら、キツネと過ちを犯そうともきっと忘れられる。