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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


昼食の席に着くとハイデスさんがいて、先程の事もあり少しだけ緊張はするけれど、笑って話せた。
そんな中、ルシスさんが目を丸くして部屋へ入ってくる。

「おやおや、もう仲直りですか?もう少し私の入る隙間を作っておいて頂きたいのですが…。まぁ、酷く落ち込んでいるようでなくて安心しました。アンリ嬢も、ハイデス、お前もね。」

そう言って、私の髪をふわりと撫でるルシスさんは、とても優しい目をしていた。

そんな子供をあやすかのような言葉に、少し居心地悪そうなハイデスさんも何だか新鮮だった。

昼食が終わり、ハイデスさんの隣に座り直したところで今後の話をするらしい。


「アンリ、まず…分かりやすく世間に君をクロヴィス家の養子として迎え入れたことを公表したい。なので、今度の舞踏会に出て欲しい。丁度初めて社交界に出る者達が主役となるデビュタントボールがあるから、そこへ出よう。私は立場上父親なのでエスコートは叶わないが、ルシスに頼むことにしている。」

「え?、社交界……私が??」

「ああ、とはいっても難しいことは何もない。丁度今の時期、毎年行われる所謂その家の娘や息子を社交界デビューさせるのに開かれるもので、同年代の同じようにまだそういった場に慣れてない者達ばかりだ。正式なものではあるが多少の粗相は許される場だから、軽い気持ちで構わない。」

「そう、大丈夫ですよ。少しばかり所作やダンスは覚える必要はありますが、あとは笑顔を忘れないこと、それが出来れば十分です。」

社交界…ダンス……何だか急に出てきた華やかな言葉に少し戸惑う。
だって、そんなの多分経験したこと無いし、どうすれば良いのかそれこそ分からないから。
けれども、この前街で見掛けたショーウィンドウのドレスのような、あんなのが着れるのかな…って思ったら何だかワクワクしてきた。

「とても素敵なお話です。…でも、私に務まるでしょうか?」

「勿論。アンリが自信が持てるようになるまできっちり教えるから安心して欲しい。大丈夫、アンリなら出来るよ。」

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