第15章 こころのきもち (学パロ)
は、廊下を歩きながら少し顔をしかめた。
視線は不自然なほど真っ直ぐ前を見て、周りはちらりとも見ない。
見られているのがわかるから。
あちこちから、視線が集まっている。
一人のに、少し憎しみが込められた視線。
うつむきたいが、うつむけば弱いと思われる。それが嫌で。
ただ前を見て進む。
どんなに経っても、この視線に慣れる事はなかった。
一人でいる時は特に。
睨まれたり、すれ違いざま暴言を吐かれたりはまだ全然かわいい方で。
たまに本気でダンテを奪おうとする人なんかは、の目の前でダンテに無理矢理口づけたりした事もあった。
いつも心臓を握られているような緊張感。
しかしは、勤めてそれを表に出さないようにしていた。
見えてきた教室。
何気なく天井の明かりを見た。
消えている。
皆帰ったのだろうか。
「………」
その方がいい。
みんながいるより、一人がいい。
安堵の息をつく。
その時。
「あの…すいませーん」
ふと後ろ側から声がかけられて、は振り返った。
の教室の前は準備室。
そこに、3人の女生徒がいた。
声をかけた一人が続けて言う。
「先生に頼まれたもの出したいんですけど、重くて…
ちょっと手伝ってもらえませんか?」
「あ…はい」
ダンテを待っていて暇なに、断る理由はない。
は教室の入口に鞄を置くと、準備室に入っていった。
中に入ると、そんなに使われていない証拠のかび臭い匂いが鼻をついた。
電気はついておらず、暗い。付かないのかもしれない。
歩くだけでそこら中に埃が舞う。ずいぶん使われていないようだ。
「どれですか?」
こんなんじゃ探せるものも探せなさそうだ。
そう思いながら辺りを見回して言うと。
…ガチャリ…
響く施錠音。
はぴたりと動きを止める。
―――あぁ…
またか、と頭を抱えた。
言われなくともわかる。私が顔も知らない彼女達がこんな事をした理由なんて。
ダンテに選ばれなかった悔しさと屈辱と嫌がらせと腹いせ。
は窓をすかさず見た。
いざという時は、あそこから逃げよう。
さりげなく、窓に少し近づく。