第12章 金色の海と太陽に
背中に感じる体温。
腰に回された細い腕。
が自分から身体をくっつけてくれるこの時間が、ダンテは好きだった。
もっとくっついて欲しくて、時折わざと運転を荒くする。
「……っ」
振り落とされまいとしがみつくの腕。
それが可笑しくて可愛くて、ダンテはゆるく幸せそうに微笑むと、力の込められたの腕に自分の手を添えてぽんぽんと叩いた。
車道を車よりも速く縫うように駆ける真っ赤な車体。
正直、は酔いで吐きそうになるのを必死でこらえていた。
ザァア…ン
ザァ……
波が寄せては返す砂浜でダンテはバイクを止めた。
いつもながらの荒い運転には吐く寸前で、息を整えるのに精一杯。
わざと荒くした運転のせいでがこんな状態なのだ。
ダンテは自分の子供っぽさに苦笑すると、先にバイクを降りての腰をつかんだ。
「大丈夫か?」
抱き上げ、抱え。
には悪いが、抵抗もなくを自然に抱えられるこの瞬間も、ダンテは好きだった。
「うええ…きもちわるい…」
抱え上げられたままなのに、ダンテにぎゅっとしがみつく。
ダンテは彼女の頭を撫でると、砂浜に腰を下ろした。
抱えた身体を自分の膝の間に座らせ、後ろから包みこむ。
ダンテの大きなコートはまでをも覆い、その暖かさに彼女は次第に落ち着いていった。
波の音だけが、静かに耳に残る。
「寒くねえか?」
「大丈夫。ダンテは?」
「全然」
はダンテに少し寄りかかった。
ダンテはそれに戸惑ったがすぐに嬉しさに変わり、を抱き寄せる。
の額に手を滑らせると、彼女は不思議そうにこちらを見上げてきて。
少し笑い、ダンテはの前髪をよけて額に唇を落とした。
彼女はくすぐったそうに笑う。
「日の出までどれくらいかな」
「さあ…あと少しじゃねえの」
もう空は少し白み始めていて、日の出が近い事を知らせていた。
真っ暗な空が藍色に変わる。
景色に色がつく。
二人は身を寄せ合い、互いの温度を確かめながら水平線を眺めた。
妙に落ち着く波の音に耳を傾けて朝陽を待つ。