第12章 金色の海と太陽に
「ー。まだかあ?」
「待って待って!鍵かけてない!」
ダンテの大きなバイク。
その唸るように低いエンジン音が、深夜の闇に響く。
ダンテはもうバイクに跨っていて、事務所の扉に鍵をかけるを見つめていた。
「こんなボロい家じゃ泥棒も入んないぜ」
「いいの!用心に越した事ないんだから」
冷えた空気から身を守るようにコートを着込んでいる。
はあっと息を吐くと白く尾を引く。
鍵がかかったかを確かめた後、小走りに走ってきた。
「はいっ」
「うおっ 何だよ!」
ハンドルを握ってが乗りやすいように車体を傾けたダンテは、上からばふっと何かをかぶせられた。
あたたかい毛の感触がする。
「マフラー。ダンテもしないと寒いでしょ?バイクで正面から風受けるんだから」
それっくらい平気だと言おうとしたが、マフラーにはのぬくもりが残っていて。
すこし鼻で息を吸い、香りをかぐ。やわらかなの匂い。
気にかけてくれた事が嬉しくて、思わず笑みがこぼれて。
ダンテはありがたく、そのマフラーを使う事にした。
ドルゥン―――
一度エンジンをふかす。
「…で、どちらまで?」
「日の出が見える海まで!」
「仰せの通りに」
にやりと笑うダンテ。
ハンドルを握る手に力を込める。
次の瞬間、バイクは大きなエンジン音とともにハイスピードで走り去って行った。