第10章 MY HOME (トリップ夢)
「泣くなよ。俺がいるだろ?」
俺が、家族の分も友達の分も愛してやるから。
「ダンテ…っ」
涙で濡れたの瞳は。
それでもあちらとこちらで彷徨っていた。
ダンテはの額に自分の額を小突き合わせ、彼女の瞳をじっと見つめた。
「俺はどこにも行かねえ。今はここがお前の居場所だ」
はっきりと言い切る。
彼女が欲しているのは割り切りだ。どうしたってここから向こうへは帰れないのだから、悩んでいたって仕方が無い。
他人が無理矢理にでも割り切らせる必要がある。でないと彼女はずっと悩み続ける。
は子供のように顔を歪め、わずかにしゃくり上げた。
思いが渦巻いて答えられない。
失う事を怖れて、自分の居場所に未だ戸惑う。
ダンテはすっと顔を傾けると、の唇に自分のそれを重ねた。
涙の味。
掬った時のものか流れてきたものかはわからないものを躊躇い無く絡めて、優しく触れるように食む。
幾らか安心したのだろう、が眠るように目を閉じた。
ダンテは角度を変え、唇を重ね続ける。
俺の事だけを考えるように。
寂しさなんて忘れられるように。
ここにいるんだと、過ぎ去った鮮やかな思い出に負けないよう、精一杯存在を主張する。