第10章 MY HOME (トリップ夢)
言葉と共に引きずり出されるたくさんの思い。
どれもこれも輝かしくて、つい数日前までは当たり前だったもの。
友達と遊ぶ事も。
今日の夕飯を尋ねる事も。
授業が眠くて仕方ない事も。
宿題を面倒くさがる事も。
みんなみんな、当たり前だった。
崩れないものだと、明日も続くものだと、思っていたのに。
「帰りたいよ…お父さん…お母さん…っ 帰りたい…!」
当たり前は突然バラバラに砕け散る。
「泣くな…」
そう言ったダンテの声は、自分でも驚くほど困惑していて。
まるで張りつめた糸がぷつんと切れたように、ぽろぽろと涙を落とす。
ダンテはその雫に、静かに唇を寄せた。
が帰りたがるのはわかる。
まだこちらに来たばかりだし、元の暮らしが忘れられないのだろう。
それでもダンテは悔しかった。
が寂しがる事が、自分の不甲斐なさに繋がっている気がして。
彼女がこちらに来たのは自分のせいではないとわかっていても、罪悪感が芽生えてしまう。
帰りたいと言う彼女の言葉を、「ここにいたくない」と捉えてしまう。
懺悔をするように、の瞳に何度も唇を寄せては涙を掬い上げる。