第8章 護身術
「何やってんだよ」
「!? わっ!!」
突然の声に驚いて身を竦める。
見上げると、いつの間に来たのかダンテがすぐ後ろにいた。
――やっぱり見つかってた…!
言葉が出ない。言い訳をしようと唇を開くも、呼吸がかすかに洩れるのみ。
怖い。
呆れてる?
どうしよう。
「家から出るなって言っただろうが。何でここにいる?」
真剣な眼差し。冗談も言わないし、笑顔なんて微塵も。
確実に怒っていた。
「いっいいじゃん!ちょっと買い物に出かけようと思って出ただけだよ。ほらっ護身用の銃もあるし、そんな心配しなくても…」
「………」
駄目だ。
何言ってんの、私。強がったって意味ない。
「そんな心配しなくても…一人で……」
声が自信をなくしていく。
醜い言い訳。ちがう、こんな言葉でダンテが騙されるわけない。
絶対呆れられた。
俯く。ダンテは何も言わない。
「…………」
駄目だ。何やってんだろう、私。
何で出てきたんだっけ?ダンテに外出るなって言われて、うんて言ったの私なのに。
何で約束破っちゃったんだろう。
情けなさすぎて、涙出そう…
ふっと、ダンテの身体が近付いた。
目の前にダンテの胸。たくましく美しい。
「ホントには、目が離せねえな」
優しい声とともに、は抱きしめられていた。
「目を離すとすぐこれだ。気が気じゃないぜ」
「え……」
何で?呆れてるんじゃなかったの?
私と過ごせなくても、どうでもいいんじゃ…
「さっさと仕事に出かけて悪かったな。早く片付けて、のところに戻りたかったんだ」
―――嘘…
「早くとこうしたかったが…まさか出てきてくれるとは思わなかったぜ。だけど悪魔の奴ら見境ねぇから、もう勝手に外出たりすんな。怪我したらどうすんだ」
―――嘘…!
言葉が出ない。代わりに流れる涙。
「私と…いる事なんて……
どうでもいいんじゃ…」
「誰だよんな事言ったの。ぶっ飛ばすぞ」
それを聞いて思わず笑った。
――じゃあ私、ぶっ飛ばされちゃうね。
信じられなかった。ダンテがこんな風に思ってたなんて。
私のために、仕事を早く終わらせようと頑張ってたなんて。