第8章 護身術
――ガゥン!!
ダンテは銃を撃つ。悪魔が塵となる。
舞い込んだ仕事の相手は雑魚が数十匹。苦労するようなものではない。
――さっさと片付けて帰るか…
仕事のせいで、との約束がまたおじゃんになった。
これで何度目だろうか。数えるのが面倒なくらいだという事は確かだ。
忌々しい。たまには休日くらいくれたっていいだろうが。
の寂しそうな、それを堪えたような顔。
帰ったら見せる、とびきりの笑顔。
あんな顔をさせてしまう自分が悔しかった。
我慢させている。
俺のせいで。
だからせめて、早く片付けてなるべく早く帰るように。でも怪我はしないように。
「………っ」
剣をなぎ払う。
その時、見慣れたものが見えた気がした。
見つけた。ダンテ。
騒いでるからすぐに場所はわかった。そこだけ人が避けていて、空気が何だかピリピリしていた。
「………カッコイイ…」
初めて見た、闘う姿。
いつも「危ねぇから」と見せてくれない、悪魔の片鱗を見せる戦い。
飛んで、走り、撃ち、薙ぐ。
叩きつけ、声とともに吹き飛ばす。
改めて惚れ直してしまう。私は、何て人を好きになったのだろう。
――見慣れた姿?
ダンテは銃を撃ちながら首を傾げる。
――気のせいか?
は家にいる。ここにいるなんて有り得ない。散々言い聞かせていたし、わざわざ危険を犯す理由も無いはず。
知り合いが通っただけだろう、と自己完結。
そう思いつつ、何の気なしにふっと視線を巡らせたダンテは…
「!!? な……っ!!!」
今度こそ視界ではっきりと確認した姿に仰天し、銃の軌道がそれた。
一瞬だけ合った目。
――……っ!?
――あっ! ヤバい目が合った!
慌てて建物の影に身を引っ込める。
――見とれすぎてつい前に出ちゃった…気付いたかな?気付いたよね。バッチリ目合ったし…
そっと覗いてみると、ダンテが最後の一匹を剣で斬りつけ、倒したところだった。
それを見て、はまたさっと身体を引っ込める。
――どうしよう。もう戻ろうか……