第8章 護身術
「悪かったな」
謝るダンテに、私は懸命に首を横に降った。
ダンテは謝らなくてもいい。謝るのは私だ。
「俺も悪かったがも悪いぜ。もしもの事があったらどうするつもりだったんだ」
「ごめんなさい…」
ごめんなさい、と。
何回も呟く。
その数だけ、涙が落ちていく。
ダンテはの髪を指ですき、撫でた。
「年上だからってな、我慢しなくていいんだぜ。年なんざ本当は関係ねぇ。は女だろうが。女は男に守られるもんだ」
呼吸が止まる。
何で。
何でダンテは、私の思ってる事がわかるんだろう。
何で言ってほしい言葉を言ってくれるんだろう。
何で。
何も言ってないのに。
ダンテがそっと身体を離した。
涙で濡れたの瞳を覗きこみ、額に唇で触れる。
はダンテを見上げた。
「……怒ってない…?」
問うと、ダンテはちょっと眉を上げた。
「何で怒るんだよ。お互い様ってもんだろ。むしろ今は、が可愛くて仕方ないんだぜ?」
そう。可愛くて仕方ない。
会いたいと思ってくれる気持ちは、いつでも男を嬉しくさせるものだ。
会いたくて追いかけて来てくれたのに、どこを怒る必要があるってんだ?
が安心したように少し微笑んだ。
ダンテが額をくっつけると、くすぐったそうに笑う。
「何で俺がに護身術を教えたかわかるか?」
ダンテが聞くと、はふるふると首を振った。
――本当は、あんまり私が役に立たないんで守るのが面倒になってきたんじゃないかと思ってたけど……
ダンテは笑う。
「仕事してる時も、に隣にいてほしかったのさ。隣で一緒に闘ってほしかった」
「……!!」
世界が広がる。
2006/11/11