第8章 護身術
時間だけが、やけにゆっくり過ぎていく。
する事もなくあったとしても全くやる気が出なくて、立てた膝に顔をうずめたままはじっとしていた。
長い。1分ってこんなに長かったっけ?
ホントに時間、流れてる?
誰か時間を止めてるんじゃないの?
何度目かのため息。待つのは嫌いだ。
何かしたいのに何もできなくて、思うだけじゃ無力なのを思い知るから。
――会いたいな
でもどうやって?
ダンテの…悪魔のところに行くしか…
「………」
行くしかないなら、行けばいいじゃん。
はふっと顔を上げた。
行けばいいじゃん、行きたいなら。
場所は近いって言ってた。闘ってるダンテを一目見るだけでいい。
自己満足なのはわかってるけど、無事なのを確認して、生きていると、そこにいるんだと感じられたら。
もし危なくなったら、近いんだし走って事務所に戻ればいいんだ。
駄目だ、きっとダンテが怒ると思いつつもドキドキする。初めての思いつきに、胸が高鳴る。
ダンテの仕事場所はまばらで、悪魔もいるし今まで行こうとは思わなかった。
でも最近は護身術も教わってるし、何とかなるかもしれない。
会いたいんだもん。
会いたいなら、会いに行けばいい。
は家をそっと出た。護身用の銃をしっかり手に握って。
―――えっと…ここらへんで悪魔が出る場所は…
前に教えてもらった事がある。間違っても近づくなと、ダンテに何度も釘を刺されたのだ。
きっとそこ。他にはない。
違ったら違ったで、このもやもやにけじめをつけてくれそうな気がする。
は走り出した。