第4章 温もり
唇に軽く触れる。
甘い香りに包まれる。
ふとダンテは思いついて、顔を離した。
今もらったばかりのチョコレートをひとつ取り出すと、口に放り込む。
何をするのかと見ていたは、もごもごと口を動かすダンテに言った。
「おいし?」
チョコレートなので美味しいも何もないだろうが、つい聞いてしまう。
ダンテの表情を見ても、いつもと変わりはなく。
ダンテはそんなを見てにやりと笑うと、唐突に彼女の唇を覆った。
「んっ… !?」
途端舌を差し込まれ、の口に広がるチョコレートの味。
ダンテは、今口に入れたチョコレートを舌での口内に押し入れたのだ。
そして舌でなぞりながらころころと弄び、溶かしていく。
「ふ…っんう は、」
チョコレートの甘さが二人をも溶かす。
僅かに粘着性を帯び何よりも甘いそれにダンテは身震いし、喘ぐに酔いしれた。
何度も何度も、捕らえられる心。
逃げるつもりはないけれど。
逃げていないのに何度も捕まるなんて、矛盾していると思いつつ、それが当前だとも思う。
が耐えられず喉を鳴らし飲み込んだのを確認して、ダンテは唇を離した。
「、顔真っ赤だぜ」
「!! うっ嘘!」
慌ててうつむいて顔に手をやる。ダンテは顔を覗き込んだ。
「美味かっただろ」
「え…… う、うん…」
恥ずかしがりつつも僅かに頷く。
ダンテは嬉しそうに笑うと、彼女の頭を撫でた。
「バレンタインもいいもんだな」
身体を起こしながら言う。
バレンタインは嫌いではなかったが、こんなに嬉しかった事は今までになかった。
「ありがとな」
好いてくれて
抱きしめる事ができて
チョコレートまでもらえて
俺は幸せだ。
「ん こちらこそ」
はにっこりと微笑み、ダンテの手を握る。
「いつもありがとう」
ダンテはその小さな手を握り返し、微笑んだ。
2006/02/07