第4章 温もり
チョコレートを一つずつ丁寧に袋に入れていく。
少し余った分を口に入れると、甘い香りと豊かなカカオの味が口いっぱいに広がった。
「ん おいしー」
ダンテの髪と同じ銀のアラザンで飾りつけたチョコレート。
袋に入れ、リボンで口を縛り、形を整える。
息を整え、はキッチンを出た。
ダンテの部屋に近づくにつれて、聴こえてくるハードロック。いつもより音量が大きく、ドアが閉めきられていても音がはっきりと聴こえる。
やっぱりね、と思い、は微笑んだ。
ドアの前に立つと、聴こえるのかどうか不安に思いつつノックする。
この音量では聴こえないだろうなと思っていると…
…ガチャ
唐突にドアが開いて、ダンテが顔を出した。
途端ドアの隙間から溢れ出す爆音に耳を塞ぐのも忘れ、は目を見張る。
「何だよ」
「ノック…聞こえたの?」
「んあ…なんとなく」
この音量の中でのノックを聞き分けたと言うのだろうか。
半ば信じられない気持ちでダンテを見つめる。
彼はリモコンで部屋に溢れる音を止めると、視線で促しを招き入れた。部屋に入りきるまで待って、ドアを閉めるダンテ。
「………」
音を立てないように、鍵まで。はもちろん気付かない。
「あーまた部屋の中汚くして…ちゃんと掃除してよねー」
部屋の中、何となく足を進める。その言葉にダンテは反応せず、変わりにその身体を後ろから抱き締めた。
「甘い匂いがする…」
「えっ」
は驚いたように身じろぎした。自分では気付いていなかったようだ。
しかし、ダンテは心地いい気持ちでの首に顔をうずめ、その香りをかいだ。
すぐにわかる。チョコレートの香りだ。
「えっと…今日、バレンタインだから…はいっチョコ!」
はダンテに抱き締められたままで、後ろにチョコレートの袋を差し出した。