第4章 温もり
数時間後。
リビングで雑誌を読んでいたは、ふと時計を見た。
あれから2時間半ほど経っている。
「……………」
そろそろ大丈夫だろうか。
雑誌をテーブルに置くとは立ち上がり、キッチンへ向かった。
キッチンへ入ると迷わず冷蔵庫へ向かい、開けてみる。すぐにラップで包まれたものが目に入り、思わず頬が緩んで。
そっと手に取り、まるでガラス細工を扱うように優しく取り出した。
赤に銀に緑に青。色とりどり小さなのアルミカップに8分ほど注がれたチョコレート。
甘いもの好きのダンテのために、わざわざ多めに作ったのだ。
喜んだ顔が目に浮かんで、は微笑んだ。
大好きな大好きな人に送るチョコレート。
今日はバレンタインだった。
「………よし」
少しアルミカップをつまんで固さを確かめる。
大丈夫だと判断すると、急く気持ちのままに小走りでリビングに戻り、クッションの下に隠しておいたラッピング袋を取り出した。
チョコレートの数が多いゆえに少し大きなそれを一枚引っ張り出して、口を開く。
ダンテを驚かせるために、彼には「いいって言うまで来ないで!」と言ってある。
ものすごく嫌そうな顔をしていたので、今日がバレンタインだとは気付いていないだろう。
この日のために、バレンタインが近い事は極力感じさせないようにしてきたのだ。
最後まで駄々をこねて理由を聞きたがっていたダンテが思い出されて、は笑いをこらえた。
「節分の豆の片付けするから」と適当な理由を言ったが、しぶしぶながらも納得していたようだ。
実際、ダンテが思いっきりぶちまけた豆があちこちに転がっていて、チョコレートの待ち時間で、嘘がばれないようは掃除もした。
ダンテは今頃、ロックを部屋中に響かせながらふて寝でもしているのだろう。