第55章 贅沢
「貴様…たった今と話す事を禁じると言ったばかりだろうが。聞こえなかったのか」
バージルが怒りも顕に言う。
「まあまあバージル。ダンテも悪気があってしたわけじゃないんだし…」
「しかし、いくら何でもここまで来るとわざと悪化させているとしか思えん」
「うんだってダンテだもん。いちいち怒ってたらこっちの身がもたないよ?」
「おいちょっとお前」
「それはそうだが…だからといって罰が無いというのも」
「そうだねー」
「そうだねーじゃねぇよお前俺のフォローに回ってくれたんじゃなかったのかよ」
とりあえず考え込むとバージル。ダンテはもはや懐疑的な視線を二人に向けるしかない。
やがて、それほど時間も経たないうちにバージルが口を開いた。
「やはり禁止令はいいと思うのだが」
「そうなの?」
途端、ダンテががばっと顔を上げて必死に言った。
「いや!それだけはやめてくれ!に触れないのだけは!」
「そうして拒否するからこそ実行に意義がある。話すのは許しこそすれ触れるのは一切禁止だ。決定だな」
「ただの嫌がらせじゃねーかよ!楽しいかよ鬼蓄が!」
「鬼畜で結構。せいぜい苦しむがいい」
バージルは意見を変える気はないらしく、満足そうににやりと笑いダンテと反対側のソファに座った。
もようやく片がついた事にほっとして座ろうとする…が。
いつもならダンテの隣に座る。しかしダンテは今禁止令が出たばかり。
こんなに狭いソファではすぐに触れてしまい、更なる罰がダンテに与えられる事だろう。
そう思い至り、彼女はバージルの隣に座った。
「…!」
ショックを受けた声をあげるダンテ。
「だって触っちゃうでしょ?」
困ったように言う彼女の身体に、バージルの腕が触れる。
戸惑うの隣でバージルのにやりと笑った顔が目に入り、ダンテはその顔面を叩き潰したくなった。
成る程こういう魂胆か。これが目的なのか。
の近くにいられるという事が。
とバージルが一緒にいる所ばかり見せつけられ気が気ではない。
開始30秒後、既にダンテは限界だった。