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【DMC】ダンテ夢短編集

第51章 時間制限付きのある日



「…っう………ふ」

せめてもの抵抗にと歯はがっちりと噛んでいたというのに、肩をつかまれていた手で首筋から背中を撫でられた瞬間、力が面白いほど抜けた。
その隙に押し込まれる熱い舌は、瞬時に私の口内を侵していく。

「はぁっ…ふ、ざけ……うあ」

噛んでやると思いながらも動けない。まるで私を知り尽くしたかのように滑る手が力を奪い、絡まる舌が思考を奪い、ただ湿った音だけがひたすらに空間を支配した。

逃げようとする頭が自然と上を向き、逃すまいと上から攻める熱が、身体を地面に押し付けていく。
せめて顔だけでも見えたら。顔だけでも見えたら呪ってやるのに。

「ひや だ…っぃ……あ、んぁ…っ」

幾度も角度を変える唇。知らない誰かの息遣い。
それはやがて荒くなり、私の力を吸い尽くしたと言わんばかりに首筋へと移動していった。


あまりに情けなかった。なんなんだこの状況。
一体私は何をしていた。しりとり?時間数え?愚痴吐き?
ダンテをただ待つだけ?
馬鹿じゃないの。

あまりに自分が滑稽で涙が出た。滲む景色は目の前には無く、ひたすら暗闇ばかりが広がる。
涙が冷たく思えて仕方ない。目の前にいるであろうこいつの身体が、息が、手が指が舌が音があまりにも熱くて。

涙が、まるで私のこの救いようのない気持ちみたいに溢れる。
唇が開いて。無意識に呼ぶ名前。

「…ンテ…ダンテ……っ」

なんで来ないの。もう往復ビンタじゃ許してやんない。
パフェも作らないご飯も抜いて掃除ばっかりやらせてやる。口だってきいてやんないから。

「…………ダンテ…っ」

嘘。
嘘嘘嘘嘘。
嘘だから。全部嘘だから全部。

往復ビンタもしないしパフェだっていっぱい作るしご飯なんて3食どころか5食作るし掃除なんて私やるしおしゃべりにも付き合うからだから。
だから。

「ダンテ…たす、け」

力なく横たえた私の瞳から零れた涙が、目隠しの布を濡らして尚も肌を伝う。

息を呑んだような気配がして這い回る手が力を強め、知らない唇はひとつ吐息をこぼした後に首から離れた。

そして一瞬の間の後に、視界がさっと開けて。


「呼んだか?」

そこには。

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