第51章 時間制限付きのある日
初めのうちは余裕ある気持ちで、一人しりとりとかしていた。
犯人はとっくに遠くに逃走済。だから声に出してのんびりと。
両手は後ろで縛られていたが足は自由だったので、あちこち部屋をうろついたりした。ほとんど何もない部屋には錆びたデスクだけがあって、椅子がわりにそれに腰かけたり。
そうして3、4時間が経過して。
爆弾は昼過ぎに始動した。なのでタイムアウトは明日の昼過ぎ。
早く来てくれないかなあと呑気に考えながら薄汚れた天井を見上げる。
残り20時間弱の命だとしたら何をするかと考えてはみるも、こんな状況では何も出来ないだろうと自分で突っ込む。
何も出来ない。
知り合いに挨拶をする事も、手紙を書く事も、話す事も、誰かに会う事も、どこかに行く事も。
何もできなかった。
夜になって、お腹が空いて、少し眠くなって。てっきりダンテは夜までには来ると思っていたので少し不満に思う。
息を切らせて飛び込んできてくれて、チンピラはボコボコに叩かれて終わり。そんな結末を予想をしていたのに。
「ダンテの馬鹿…遅いよ」
欠伸を噛み締めながらまどろむ。
やる事はただひたすら呼吸をするだけ。何もしないというのはこれほどまでに辛いものかとぼんやり思った。
とにかく時間が長い。5分くらい経ったのではと爆弾の時計を見たら1分しか経っていなかったのを見て、どこかが落胆する。
時間てこんなに遅いものだったろうか。ダンテといる時はあっという間に夜になったものだけど。
助かったらどんな文句を言ってやろうと考える。ダンテには愚痴を吐くよりも無視する方が効きそうだ。
あれこれ考えながら規則正しくカウントをする数字を見つめているうちに、やがて私は眠ってしまった。