第50章 境目
「あれ、思ったほど汚くない」
部屋を見ての第一声。ほっとけ、とダンテが言う。
物が散らかっているものの、そこまで汚いという感じではなかった。
とりあえず、座る場所を確保しようとテレビの前の物を片付けてみる。
「んなのんびり掃除して、今日お前時間あんの?」
ダンテが冷えたお茶を冷蔵庫から出しながら言った。
「ん、あるよー。泊まってっても大丈夫なくらいあるから気にしないで」
雑誌をまとめ、CDを棚に戻し、クッションを座布団がわりにする。
「うん、床が見える」
「失礼だな」
「ゲームしよ」
四つん這いでテレビの前に行きスイッチをつける。ゲーム機のスイッチも入れると、ダンテに手の平を突き出した。
「ん」
「なんだよ」
「ゲームですよ」
「あぁ」
立ち上がったダンテは私の側まで来ると、テレビの下を漁った。
せっかく片付けでしまったCDやらがどんどん出されていく。
こうやって物が散らかっていくのね、と眺めながら思った。