第50章 境目
「お前本当に泊まる気か?」
「気分による。いいじゃん明日休みなんだし」
「そりゃそうだけどな。我慢できっかねぇ」
「何がさ。言っとくけど勝ってダンテをへこませるまでいるから!」
「俺をへこませたいなら軍隊連れてきな」
「なにそれかっこわるぅ」
「惚れそうの間違いだろ」
笑って、ダンテがゲーム機にCDを入れるのを見届ける。
ダンテに遠慮されるのは嫌だった。付け足して私は唇を開く。
「泊まる事を親が心配しないかって意味なら、大丈夫だよ。ダンテだから安心だってさ」
「んなことねーと思うけどな」
「嘘ばっか」
ダンテはいつも私を楽しくさせてくれた。彼は陽気だった。
楽しくて楽しくて、二人でぎゃんぎゃん騒いでいるのが愉快で愉快で。
街中でナンパに絡まれた時も助けてくれて、こんなに心強い友達はいなくて。
「お前とは、ただ騒ぐだけのガキの付き合いを続ける気はねぇよ。」
不意に落とされたその言葉は、鉛のように私の中に沈んだ。
CDが機械の中に吸い込まれていく。私は、ダンテを見る。
彼の目は、私を捉えていた。
「俺が他の女と遊んでるとこ、見た事ねぇだろお前」
遊びに誘うといつも二つ返事で返ってきて、だからこそ気兼ね無く誘えて。
私の腕を、掴むダンテの手。
「こんだけ待ってやったんだ。そろそろいいだろうが」
2009/08/02