第45章 prince&princess
「これとあのスカート合うんじゃねぇの」
ダンテがさした指の先には、ふわりとしたティアードスカート。はぱっと顔を輝かせた。
「でもラフすぎない?」
「そうでもねぇだろ。お前よく動き回るからラフな方がいいって」
「そんな動き回ってないよっ!あ、でも今着てるジャケットと合わせると丁度いいかも」
つん、とジャケットの裾を引っ張る。コーディネートを考えているのだろう、彼女はしばし黙り込んだ。
うつむいたの項。シャンプーと石鹸の香り。自分より細いくせに柔らかい身体。
肌に指先で触れると、きょとんとした顔で見上げてきた。
「着てみな」
「試着?うん、そうだね」
平たい状態で置かれた服を眺めて悩むよりも、実際に着た方がずっとわかりやすい。
は店員を探して辺りを見回した。すかさず一人がにこやかな笑顔で近づいて来て、試着室へ促す。
「こちらへどうぞ」
「はーい」
ハンガーを外して服を手渡す店員。はありがとうございます、と呟いてそれを受け取る。
「失礼致します」
カーテンを閉め少し離れて、一瞬ダンテと目が合ったその店員。ダンテが笑顔を浮かべる間もなく顔を赤くしてすぐ目を逸らした。
ダンテは試着室の真ん前で待つ。店員がこちらをちらちら伺い何か話したそうな顔をしていたが、気付いていないフリをした。
悪いな。どう足掻いたって今の俺はしか見えちゃいないんだ。
あんたに応える気はない。応えた所でどう思われるかなんて、自慢じゃねぇがわかりきってる。
それを知った時のあいつの顔は、一番させたくない。