第45章 prince&princess
試着室のカーテンが揺れて、中で着替えているであろうの腕がちらりと見える。それに目を細めながら、次はどこへ行こうか、夕飯は何を食べようか、他に彼女が好きそうな服屋がなかったか、考え馳せる。
驚くほどで占められている脳内。振り回されていると思うならそれまで。
恋愛沙汰はいつだって振り回し振り回され、ただそれに気付いていないだけの状態だ。
ダンテは今の自分に、に、状況に、満足していた。
文句のつけようがない程に。
「着れたか?」
カーテンが揺れる頻度と頃合いを見計らって声をかける。すると考えるような微かな声が聞こえた。
「開けるぞ」
「ちょわっ待っ」
問答無用で開けてやり、顔だけ中に覗かせる。他の奴に見せるなんざ冗談じゃねえ。
中には、戸惑った表情のがいた。本人は恥ずかしがっているようだが、服を着た彼女はやっぱり可愛くて。
いや、もう服なんか関係ねぇのかもな。がいれば。隣にいれば。
「ど…どうですか」
「ん」
ダンテは微笑んだ。服を着て乱れた髪を整える暇もなかったのだろう、少しくしゃくしゃした髪をさらさらとすく。
大人しくされるがままになっているの髪から頬に、手を滑らせて、唇をなぞる。嫌がらない。
ゆっくりと近づく。
試着室のカーテンを片手で引っ張り隠して、の唇に、自分のそれを一度だけ重ねた。
「世界一可愛いお姫さんだ」
2008/09/30