第45章 prince&princess
「かわいー!あれ可愛い!」
好みの服を見つけてはしゃいでしまうのは女の性のようなもの。それをぴたりと当ててくれるダンテは本当にすごいと思う。
「荷物持っててやるから好きなだけ選びな」
「うんっ」
意気込んだは、財布の入ったポシェットだけ持って店内に入った。
ここからは彼女の領分。ダンテはゆっくり後に続く。
ダンテが一歩店に入っただけで、店内はにわかに静まりかえった。
慣れているは心の中で苦笑する。店員も客も、ダンテに見惚れているのだ。
輝く銀髪とその長身、無駄のないしっかりした身体つきに抜群のスタイルの良さ。それだけでも十分だというのに、顔まで整っている。
人懐っこい笑顔を浮かべる姿はどこか母性本能を刺激され、この笑顔を受けてよろめかない女の人がいるならお目にかかりたい。
「……ま、本人は気付いてないけどね…」
小声で呟いて、は少し優越感に浸る。
一瞬で注目を集める彼が向かうのは、他の誰でもなく自分の所。それが嬉しかった。
ダンテはいつも思う。好きな服を見て、はしゃいで笑顔を溢れさせるは、まるで小動物だ。
頭を撫でてもっと喜ばせてやりたくなる。
「ね!これどうかな?」
尋ねながら自分の身体にカットソーを当てて見せる彼女。その目はきらきらしていて、連れてきて正解だったとダンテは思った。
「色暗くねぇか?」
「そう?」
「お前が持ってる服、明るい色ばっかだろ。合わせられんのか?」
「んー……じゃこっち!」
「ああ、そっちだな。可愛いぜ」
可愛い、と言ってやるとはとびきりの笑顔で笑うんだ。その服を握りしめた彼女の腰に、するりと手を回す。
細い腰を抱き寄せ、体温が伝わるゼロ距離。店員は声をかけるタイミングを逃していた。