第44章 ごっこ遊び
痴漢ごっこなんて物騒な事冗談だろうと思ったが、ダンテならやりかねない。
腕でぐいぐい押し返して抵抗してみるものの彼は全く止める気配を見せず、むしろ煽られたように大胆になる。
太股を手が滑り、スカートをゆっくりとたくしあげていく。
首筋は熱を奪われひんやりと冷えてきていたがその上からダンテが荒く唇を落としていき、熱いのか冷たいのかわからなくなった。
「やめてよ…ほんとに、はずかし…」
「うるせーな、それがいいんだろうが。どんだけ煽るつもりだっつの」
「んあっ!」
言葉と共に首に噛みつかれ、痛みに一瞬体制が崩れた。しかしダンテがそれを許すはずもなく、無理矢理立たせて叱る。
「ほら立て。怪しまれんぞ」
「そう思うならやめてよ!」
「観念しろって。本当はイイんだろ?ほら、口塞いどいてやるから」
言うやいなや口に異物が入り込む。ダンテの指だ。
くぐもった声を上げるを満足そうに見ると、「イイ子だ」と笑う。
その声は興奮したように熱い。
反射的に頭を引こうにもダンテの身体にぶつかり逃げられない。
鬼だ、とは思った。心底鬼だ。
普段から危ない事に自ら飛び込んだり面倒事を起こしたりするダンテだが、ここまでは初めてだった。
それに普通の危険とは訳が違う。露見したらもうここに住んでいられない。
「うぁ…は…っ」
しかし口内ではダンテの指が休む暇もなくさ迷い舌を掻き、それから逃れようと舌を動かせばダンテがただただ悦ぶばかり。
溢れそうになる唾液をじゅるりと吸い、呼吸しようと息をつけば「上手くなったな」と何かに耐えるような声がする。
意味がわからない。
ぐちゃぐちゃ。
ぐちゃぐちゃ。
音が体内に直接響いて、どこかで高鳴る気持ち。あり得ない早く電車止まれと思う理性。
ぐちゃぐちゃになる。
わからなくなる。