第42章 離れた気持ち
「ちょっ…ダンテ、離し…」
「あーいいって。そのまま聞いて。最近あいつ女とも会ってるから心配だろうと思ってさ…ちょっとお節介焼かせてくれな」
どきん、と。
心臓が。
「君、誕生日近いんだろ?こいつ女友達片っ端から呼んで、何貰ったら嬉しいか聞いて回ってんだよ」
「え…」
「今まで女なんて何やっても喜ぶとか言ってたくせに、あれが好きそうだとかこれがどうとか一気に臆病になってさ。…君の事よく聞いてるよ。料理が美味いって」
思わずダンテを見る。うつむいた顔から表情は読めない。
ねえちょっとダンテ。これ本当なの?
「ま、そういう事だから心配するなよ。こいつアホみたいに君にベタ惚れだから」
「え あ…りがとうございま…」
外に出ようとする男を見送りたかったが、ダンテが重くて進まない。
男は私を見て笑った。
「そのままでいいって、ダンテが起きないうちに俺は退散するから。君と話してるの見たられたら殴られそうだ」
「あっありがとうございました…!」
ひらひら手を振ってバタンと扉が閉まる。
面白い事を聞いてしまった。さっきまでの不機嫌が嘘みたい。
ダンテは眠ってしまったようで、すうすう寝息を立てている。
起きたらまずダンテを叱って、あのお友達さんに御礼を言わせて。
今聞いた事は知らないふりをしていようと思った。
20080329