第42章 離れた気持ち
飲みに行くとダンテの帰りは決まって真夜中。最悪明け方。
初めの頃は律義に起きていようとしていたが、それが何度も続けばさすがにさっさと寝るようになる。
しかしぐっすりと私が眠っている中、真夜中の闇に玄関のドアを叩く音が響いた。
こんな夜中に。でもダンテなら自分で開けて入って来るから、ダンテじゃない。
睡眠を無理矢理妨げられてあまりいい気分ではない中、扉を開けると。
「寝てるのにごめんね。こいつがさ…」
親しげに話す知らない男性。しかしその男が肩に担いでいる見知ったもう一人を見て。
「ダンテ…。お友達ですか?」
「そう。こいつ珍しく潰れちゃって…良かったら、中まで引き摺るけど」
「すみません。お願いします」
ダンテみたいな体格のいい男はさすがに運べない。玄関を大きく開けて、ソファまで運んでもらった。
ダンテは微妙に起きているらしく時折唸っている。酒には強い方のダンテが潰れたとなると、相当飲んだのだろう。
「ありがとうございます。お手数掛けてすみません…」
ぐったりとソファに横たわるダンテを背中に深く礼をする。
男は人の良さそうな笑顔を浮かべた。
「とんでもない。それより君こそ大丈夫なの?。こいつ、最近ほとんど出歩いてるだろ」
知ったような口調に、ダンテが出掛けた先で会っているのはこの人なのかと思った。
「あぁ…まあ、仕方ないかなって」
苦笑。
男はそれを見て、何か言うのを迷うような素振りを見せた。
ダンテの様子を見て、聞かれたくない事なのか手招きされる。
「?」
近寄ろうとすると。
「ー…」
「わっ」
ダンテが後ろから抱きついてきて態勢を崩した。
寝てるのか起きてるのか、寝惚けたような緩慢さ。
倒れそうになるのを堪え、首に手を回すダンテに慌てて言う。