第31章 水音
ぼうっとしていたら自分までのぼせそうになり、人の事言えねえなと思いながらダンテは風呂場を出た。
がテーブルに頭を乗せてテレビを眺めている。顔色はもう落ち着いていた。
ダンテが出てきたのを見て、笑う。
「顔赤い」
「うるせえな。のぼせてなんかいねーぞ」
「のぼせてるなんて誰も言ってないじゃーん」
ダンテはそれに瞬くとふっと吹き出し、の髪をぐりぐりかきまわす。
その手をかいくぐって顔を上げたの額に唇を落とした。
「まだ時間あるな…外出るか?」
「いいけど。行く所あるの?」
「遊歩道ってのブラついてみようぜ」
はぴょこんと立ち上がり、早速出かける準備をする。
今日はずっとダンテと一緒。ダンテと話す全ての事が、嬉しくて仕方なかった。
しかし。
ちょっとした時間潰しに出掛けた二人の散歩は、予想外に時間をとってしまった。
普段あまり目にする事のない緑に誘われてか遠くまで歩いてしまったのだ。
それだけならよかったのだが、途中はしゃいだが沼に片足を突っ込んでしまい。
爆笑するダンテには涙を目に溜め、慌てて彼は手を貸した。
そうして旅館に帰って来たのは、夕食の時間を大分過ぎてしまった日没。
ダンテはの手を引いて部屋まで戻る。
「だから笑って悪かったって。片足突っ込んだの驚いた顔が可愛くて…」
「嘘ばっかり!すんごい笑ってたくせに!」
恥ずかしいのかはさっきからダンテに反発するばかり。まあ何事もなくてよかったと、ダンテは小さく呟いた。
これで怪我とかされたのではたまらない。これくらいはいい思い出だ。