第31章 水音
やがて30分程では出てきた。ほとんど湯に浸かっていたのか、のぼせ気味で顔が紅い。
服もいつもより大きくはだけられ、柔らかそうな肌がのぞいている。
それにダンテの鼓動が跳ねた。
「大丈夫かよ?」
「ん…お湯が思ったより熱かったみたい…」
するりと頬に指を滑らせるとしっとりと汗ばんでいたて、ダンテはハッと手を離した。
――やべえ…
抱き締めそうになった。まだ早いと、精一杯自分を抑える。
せめて風呂に入ってからにするべきだろう。そう思ったダンテは、足早に風呂場へ向かった。
――さっきまでこの湯にが…
熱めのお湯に肩まで浸かり、空を見上げながらぼんやりと考えるダンテ。
それを思うだけでのぼせそうだ。
目を閉じて一度深呼吸し、気持ちを切り替え。
自分が笑える。こんなに静かで安全だとわかっている所でも、常に辺りの気配を探っている。
だからといって別段悲観はしていなかった。ただ、冷たく事実を見つめるような気持ち。
風呂から出たら、そこらへん散歩してみるか…。
確か近くに遊歩道があったなと思い出す。そこなら時間潰しに丁度いい。
散歩をして、夕食を取って…せっかく来たのだから、もう一度風呂に入りたい。
やたらと騒がしい喧騒もなくて辺りには自然だけ。悪い所ではなかった。
ダンテは目を開ける。
空を、一羽の鳥がゆったりと飛んでいた。