第29章 お気に入りの曲
ダンテは顔をしかめ、怒鳴る。
「何だよ二人して馬鹿馬鹿ってよ!俺が何したか言ってくんねーとわかんねーよ!」
「貴様は本当に馬鹿だ。これからは音楽を禁ずる。ジュークボックスも粗大ごみ行き」
「え!!!」
「、余り腹を立てるな。こんな奴に怒る必要はない」
「そ…うなの?」
「ああ。俺が叱っておく。は何も悪くないから気にするな」
「ええ!!! っていうかバージルあんたさっさとから離れろよ!いつまで肩に手置いてんだよ」
「黙れ。お前はもっと人の話を聞け」
「そーよ!いつも音楽ばっかり聴いて…耳悪くなっても知らないから!」
全く容赦なくずけずけとダンテに口を開くバージルに便乗して、腹いせに言う。
するとダンテは少し気まずい顔をした。居心地が悪そうに頬を掻く。
少し言い過ぎたかもしれないと、は口を噤んだ。いつも自信満々なダンテゆえに、その様子は珍しくて。
不安がよぎる。
大体、ダンテが悪いのか自分が悪いのかもわからないのだ。ダンテばかり責めるのは間違っている。
しかし、一度怒ってしまった手前何だかそれが言いづらくて。
ずっとこっちを見つめる瞳を見返す。
その様子を見ていたバージルは、口を開いた。
「」
「ん?」
「馬鹿に何か言いたい事があるんじゃないのか?」
目を見張った。
バージルは全てを知っているような目をしていた。
それに気圧されたように視線を外してダンテを見ると、何かあるなら言ってくれ、という顔。
言うべき?こんな小さな事を。
こんな小さな事だからこそ、言うべき?
ダンテを束縛したくはない。いつも悪魔と対峙して生きるか死ぬかの狭間にいるのだから、家にいる時くらい好きな事をさせてあげたい。
だけど。
だけど、できるなら。