第27章 目を開けばそこに
「ん…おかえり…」
「…………」
夢か幻か。
帰ってからすぐにの声が聴けないのかと愚痴た自分の幻聴か。
ああ、寝言なのか。
「おかえりってば」
寝言じゃなかった。
「起きて…んのか?」
信じられない気持ちで問う。
「そうと言えばそうだけど違うと言えば違う…」
「どっちだよ」
「うとうとしてたけどドアの音で目が覚めたの」
ダンテはちらりとドアを見遣った。
「あぁ…そりゃ悪かったな」
「ううん。平気…」
答えるの声は間延びしていて、今にも寝てしまいそう。ダンテは気付かれないように噴き出した。
コートをデスク脇のハンガーにかける。
「よく起きてたな」
「だっていつも寝ちゃうんだもん…今日こそはと思って」
膝を抱えてそう呟くが愛しくて、ダンテはその頭をするりと撫でた。