第24章 かえるところ (死ネタ)
その表情を見てどきりとした。
何かを諦めたような、彼の方こそ死にそうな顔。
この人の過去に、何があったのだろう。
「……あなたは…」
無意識のうちに小さく呟いていて、その声に彼は振り返った。
「ダンテだ」
「ダンテ……あなたは、なぜここに?」
すると彼は目を見張り、わざとらしく肩をすくめて苦笑した。
「…母さんがな」
「そう…」
やはり。
失っていた。
「母さんも父さんもいない。双子の兄貴も行方不明で見つからない」
一人の寂しさを、誰よりも知って。
それでも生きていられるなんて、強い人だ。
私には。
私には、とても耐えられそうにない。
弱いな。弱すぎて、涙も出ない。
笑いしか出ない。
「…あんたさ」
くるりと身体もこちらに向けて、ダンテが言った。
今までとは打って変わって明るい声。
それが表面だけのものなのかは、わからない。
「あんた、今はまだ苦しくて辛くて寂しくて仕方ない時だろ。よかったら、俺のとこに来ねぇか?」
突然何を言い出すのかと思った。
話が飛びすぎではないのか。たった今初めて会ったばかりなのに、家に招くなんて。
しかし、それほど嫌な気はしないのが不思議な所で。
彼は続ける。
「誰かといりゃ、ちょっとは気が紛れんだろ。だから…だからもう、泣くな」
言われた言葉に、は瞬いた。
首を傾げる。
「……?何言って…私は泣いてなんかいないわ」
するとダンテは一瞬、初めて辛そうに顔を歪めて。
すっと腕を伸ばし、の目元をすっと撫でた。
優しく、遠慮がちに。