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【DMC】ダンテ夢短編集

第24章 かえるところ (死ネタ)



「泣いてないなら…これ、何だよ」

離れた彼の指は濡れていた。
しずくがぱたりと、土に染み込んだ。

「え…嘘。私、…いつから泣いて…」

慌てて頬に手を当てる。思った以上に濡れていて、驚いた。
一体いつから。涙なんて流していないと思ってたのに。

「俺があんたを見た時は、もう泣いてたぜ」

信じられない。そう思うが、頬を滑り落ちる温かさは確かに涙。
それを服の袖で拭おうとして。
ぎょっとした。

服にも無数の涙の跡。
それもひとつふたつではない。いくつも重なって。


まさか、泣いていないと思っていたのは私だけ?
泣いていないと思い込んでいただけで、泣いている事に気付かなかっただけ?

私が泣いていたから、葬式に参列した人は皆苦しそうにしていたの?
葬式の時からずっと泣いて……


呆然とするの肩を、ダンテがそっと支えた。

「もう、一人じゃない。少なくとも孤独じゃない。あんたも俺も」

一人。一人の否定。
本当に私の愛しい人はいなくなってしまったのだと、唐突に理解した。

涙が止まらない。

「私、これから…どうやって生きていけば…っ」

嗚咽で言葉がうまく紡げなかった。
それでもダンテは、優しく肩を叩いてくれて。

「あんまり焦んな。俺の家、便利屋なんだ。自分の生き方が見つかるまで、好きなだけいるといい」

そう、言ってくれて。 安心して力が抜けた。
そのへたりこむ身体を、ダンテが。
幾つの困難を乗り越えたか知れない手で。
包んだ。


失った悲しみはあまりにも大きかった。
大きすぎて背負いきれなくて、押し潰されてしまいそうだけど。
誰かがいてくれるだけで。

それだけで。





2007/04/30
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