第24章 かえるところ (死ネタ)
疾走。
失踪。
失速。
叱咤。
時折、失笑。
なぜこんなに急いでいるのだろう。
どこかで声がする。
急いでも、意味がないと。
走って。
まるで急き立てられるように
追いやられるように走って。
走った先は。
「…あれ……」
整然とされた空間。
冷たい静寂。
風が撫でる石。
並べられた花。
儀式的なものを感じさせる十字架。
石板に刻まれた名前。
「…墓地…」
呆然と立ちすくんだ。
どうしてこんな所に来てしまったのだろう。
どうしてこんなに…
「……ぁ…」
足が、勝手に歩き出す。
手が震える。
嫌だ。行きたくない。
やめて。
一歩一歩、確実に縮まる距離。
遠ざかる出口。
まるで身体と意思が正反対。
知らないはずなのに、身体は知っていて。
ぴたりと、止まって。
目の前には十字架。
ああ、目眩がする。
身体中の血が逆流するような息苦しさ。
土に埋め込まれた大理石には。
よく見知った。
請い焦がれた。
愛しい人の名前が。
――何で、お墓なんかに彼の名前が…
墓。
死んだ人が眠る場所。
残された人の、己への慰め。
気休め。
亡くなった人を忘れないよう、刻みつけられた名前。
身体の中の頭の中の心の中の何かが
音を立てて
壊れて