第23章 代償
ダンテはそれには答えなかった。
少しの間考え込むようにして、やがて。
の肩を抱いて。
「来な」
優しい声。
気遣ってくれている声。
この声は他の人には出さない事を、私は知っている。
おずおずと身体を寄せてくっつくと、ダンテの大きな手がの頭を包み込んで、自分の身体にもたれさせた。
「寒くねーか?」
「ん、平気」
そういうダンテが寒そうだ。薄いシャツ1枚で、上着も何も着ていないのだから。
それでも、心配してくれた事が嬉しくて。
微笑んで、目を閉じた。
ダンテは、力が抜けたように目を閉じてしまったの髪を撫でる。
緊張していたのはどうしてなのか。理由は少しわかる気がした。
――最近、仕事ばっかだったもんなぁ…
最後に二人で出掛けたのはいつだっただろう。
仕事続きで身体を張って、休日には寝まくって体力の温存。ずっとその繰り返しだった。
時折にどこか行きたい所はあるかと尋ねてみるも、「せっかくの休みなんだから休んでて」と微笑まれ。
ついそれに甘えてしまい、気付けば二人でいる時間は減ってしまっていて。
にこうして触れて、思う。
いつも疲れが取りきれなかったのはなぜか。彼女に触れていないからだと。
触れるだけでこんなに安心する。どんなものよりよく効く栄養剤。
――俺、よく触れないで我慢してこれたな…
あまりに渇望していた。
柄にもなく遠慮していた。だからこそ招いた事態。結果。
…まあ、いいか。
ダンテは笑う。
今こうして二人でいられるなら、いいか。