第23章 代償
今度はダンテがを見てみると、少し赤い顔をしていた。
――かっ拐いてえ…
独占欲がどこからか首をもたげる。
じわじわと広がるもの。嫌いじゃない。
離れていかないだろうか。
ふと不安になって、ためらいなくの手をつかんだ。
すると彼女は驚いたようにこっちを見て。
首を少し傾げて。
少し嬉しそうに、また前を見て。
ささやかな行動に対する、大きな幸せ。
釣り合わないんじゃないかと時々思う。俺、こんなに幸せでいいのかよ?
同時に少しだけ怖くなる。
いつかは終わってしまうから。なくなってしまうから。
だから今、ありったけの幸せを感じていられるのではないかと。
「…………」
言葉を交わさなくても安心していられる関係。
憧れていた。いつも、言葉にしないと何も伝わらなかったから。
だから今。
本当に。
公園にはあっという間に着いてしまった。
そう感じただけなのかもしれない。公園にある時計台は、家を出た時よりも随分針が進んでいた。
どこかで子供のはしゃぐ声が聞こえる。
それを避けるように、二人は周りに人のいない所に進みベンチに腰を下ろした。
二人きり。
家にいる時も二人きりなのには変わりはないが、妙に緊張しての心臓が騒ぐ。
まるでダンテと知り合いになったばかりの時のよう。
ダンテはやっぱり、そんな様子のをじっと見つめていて。
背もたれに身体を預けると、の髪をするりと一度すいた。
それだけで、はびくりと身体を震わせてしまう。
「どした。そんなに緊張して」
少し笑いを含んだ声。
そう言われても、どうして緊張なんかしてるのか、自分でもわからないのだ。は素直に言う。
「わかん…ない」