第23章 代償
空は快晴。
スラムの汚さとは全く似合わない爽やかさ。
気持ちまで洗われるような錯覚。
そう、錯覚だ。
本当に。
本当に本当に心を洗ってくれるのは、隣にいる愛しい人だ。
どれほど助けられたか知れない。
ささやかな優しさに、どれだけ気付けていないか知れない。
感謝と謝罪と慈愛を込めて。
せめて今は。
ゆっくりとした日は、ゆっくりと過ごすのが一番いいと、ダンテは知っていた。
下手にどこかに行くよりも、近場の静かな場所で二人で過ごすのが一番いい。
考える時間ができる。
互いを感じ合う時間ができる。
それが何よりも、何よりも、行動よりも言葉よりも大切なものだと。
失って後悔する事がないように、互いを認め。感じ。
ダンテは、眠ってしまいそうなの額に唇を寄せる。
全然足りなくて、優しくの顔を上に向けて。
不思議そうに目を薄く開いた、彼女の唇に。
幸せを。
2007/04/22