第23章 代償
ごうごうと、空の上で音が響く。
風が強い証拠だ。時折突風が吹いての髪を流していった。
は歩きながらダンテをちらりと見る。
今の彼はいつもの真っ赤なコートではなく、銀の装飾品がついた黒いシャツに黒の革のパンツ。ヘビーメタルを思わせるようなその服装は、全くダンテらしいとは思う。
鈍く光る革がダンテの長い足を強調し、どこを見ても完璧なプロポーションだった。
「…ん?」
視線に気付いたのか、ダンテがこちらを向いた。
は慌てて前を見る。こっそり見るつもりが、いつしかまじまじと見ていたらしい。
「なっ何でもない!」
言ってはみたものの、こんな挙動不審と上擦った声で何でもないも何もないだろうと自分で思った。
案の定ダンテはにやりと笑う。
の手がぐいっと引かれ、ダンテとの距離が一気にゼロに。
「どーしたよ?言ってみ」
「何でもないってば!近い…!」
歩道側をが歩いているため、避けようと離れようとするほど追いやられていく。
すると、ぱっと手が放されて。
ハッとした瞬間には、頭をわずかに支えられて頬に唇の暖かさ。
「!?」
その場所を押さえて反射的に振り返ると、意地悪そうに笑った視線とぶつかった。
絶対楽しんでる。そう確信するような。
そしてが思っている通り、ダンテはの反応を面白がっていた。
全く可愛いったらない。突っぱねるところが、それはもう可愛くて仕方ないのだ。
そして、見惚れてくれた事にどうしようもない嬉しさが。