第21章 笑顔
しかしそうしていたのは一時だけで、すぐにダンテの手は離れてしまった。
「……?」
不審に思って見てみると、ダンテのにんまり顔。
反射的に警戒するような顔になる。
ダンテはの頬に手を添えて、つい、と動かし。
「ずっと放置されっぱなしだったんだ。ちょっとは慰めてくれよな」
そう言うと、顔がふっと消えて。
え、と思った瞬間、腿に重み。
「へっへ。スキありぃ」
下を見ると、自分の腿の上にダンテの頭が乗っかっていた。
「うわ!」
驚いて足を動かしたが、ダンテは少しだけ頭を持ち上げてそれをやり過ごして
そのままぐい、との顔を引き寄せると、唇を重ねた。
「………!」
深くはない。少し強く触れただけ。
それだけなのに、は力が抜けてしまって。
大人しく、ダンテを乗せるしかなくなってしまう。
「全く…こういう時だけは動くの早いんだね。いつも、掃除してって言っても食事作るの手伝ってって言ってもすぐ動かないのに」
「それとこれとじゃ話がちげーんだよ」
「違わないよ」
「俺にとっちゃ正反対だ」
は笑って、さらさらの銀髪を邪魔にならないようにどけてやる。
ダンテはそれにくすぐったそうに目を細めた。
ああ、そういえば、こうしてゆっくりダンテに触ったのは久しぶりだ。
本当に最近、あまり構ってあげられなかった。
「ごめんね…」
小さく呟いて、ダンテの頭を少し撫でる。
するとダンテは気持ちよさそうに目を閉じて。
はそれに少し目を見張ると、笑ってまた撫でてやった。
ゆらゆらと、二人の気持ちに合わせるように優しく流れる時間。
聞こえる音は、外からの喧騒のみ。
それも遠く聞こえて、まるで二人だけで別の世界に来たかのよう。