第11章 揺らぎ
「どうした…?」
そう問うヒュウイの表情は、やはり面白そうに笑っている。
は、ヒュウイを突き飛ばしてしまった事に自分で驚いて動揺して困惑して、まともに返事が返せなかった。
「………朝食が…冷めます」
黙っていた時間はさほど長くはなかったらしい。
やっとそう言うと、ヒュウイは別段疑問を持った風でもなく退屈そうに立ち上がり、唐突にの手を掴んだ。
びくりと身を引いたが、彼は構わず手を引く。
「急いでるんだろ?」
「………はい」
行かせてくれるのだろうか。
まるで許すような言動に、は戸惑いを隠せない。
視線が揺れる。
そして、心のどこかで引き止められる事を期待していた自分が、恥ずかしくなった。
テーブルにつきながら、ヒュウイが言う。
「俺の事は気にするな。さっさと食え…」
「…はい」
返事をしただったが、不意にヒュウイが驚いたようにこっちを見てきて見返す。
どうしたというのだろう。何だか、今日はやけに優しい気がするなと、ヒュウイの目を見ながらは思った。
いつもは文句言って命令ばかりするのに…まるでを気遣うような事ばかりを言い、してくる。
「……あの…?」
こちらを見たまま黙っているヒュウイを不審に思い、首を傾げる。
ヒュウイの表情は同じようでいて違うようで。
違うようでいて同じようで。
半ば呆然として
驚愕として
愕然として
を見て。
「……俺…は……私は…」