第11章 揺らぎ
「え…」
私?
今、何て―――
「くそっ!!」
ダァン!!!
驚いた次の瞬間ヒュウイが思いっきりテーブルを叩き、物凄い音には飛び上がった。
目を丸くしてヒュウイを見る。あまりに一瞬の出来事で、あまりに日常に溶けていて、何が起こったのか全くわからなかった。
なぜ。
ヒュウイはなぜ、自分の事を―――
わけもわからず固まり、ヒュウイを見つめる。
彼は忌々しそうに舌打ちをすると、ぎろりとを睨んだ。
「早く食えよ」
「…あ、はいっ」
怖い。怒っている。
しかしそれはが見た事のあるヒュウイの姿で、少しホッとした。
さっきのヒュウイはまるで別人。考えれば考えるほど、何かがおかしい。
―――いつ から?
もくもくと黙って食事をしているので、知らず考え込んでしまう。
ヒュウイがおかしかったのは今だけ?違う。
ソファで手を引かれた時も何か優しかった。
でも、朝起きた時―――押し倒して来た時のヒュウイは、いつものヒュウイ。
「…………」
煮詰まる。
何かあるような気がしたが、何もないような気もした。
ヒュウイは気まぐれだ。気まぐれで優しくされる事なんて、今までにいくらでもあった。
それに夢を見て、容易く壊された事だって、何度も。
「…ご馳走様でした」
手を合わせて言い、席を立ち上がる。
ヒュウイは何も言わない。
を止めないし、見ない。
それは意図してではなく、考え込んでいたからのようだった。
さっきから食事が進んでいない。眉間にしわを刻み、ずっと噛んでばかり。
さっきの事といい今といい、珍しい事もあるものだと思いながら、は食器を流しに置いた。