第11章 揺らぎ
それはそれで面白い気がして、は随分垢が抜けたものだと苦笑する。
こんなに和やかな思考が働くほど、自分はこの生活に慣れてしまったのか。
階段を降りてキッチンに向かう。
いくら急いでいると言っても、ヒュウイの朝食をほったらかしにはできなかった。
はやる気持ちに左右され、作られるのは簡単な朝食。ヒュウイはソファで寝転がっている。
静かだなと思っているとくしゃみの声が響き、風邪をひいたのかと少し心配になった。
「…朝食です」
「んおー…起こせ」
だらんと両腕を持ち上げるヒュウイ。
は少しだけ息をつき、言われた通りにヒュウイの手を握り、引っ張る。
が、ヒュウイは逆にの手を握り返すと、起こされる前に身体を起こし、同時にを引っ張った。
バランスを崩して倒れるが、の両手は掴まれていて手をつけない。
たまらずどさりとヒュウイに倒れ込み、彼はそれを当然のように受け止めてゆるく抱き締めた。
ヒュウイの両足に身体を挟まれ、どくんと心臓が跳ねてやたらと焦る。
「う…ごめんなさ…」
「お前さあ」
離れようとするを声で威圧し、背中に腕を回し。
くるくる。
くるくる。
少しだけ短くなったの髪を、指にからめてはほどくヒュウイ。
声音でわかる。
きっと今彼は、楽しそうな顔をしているのだろう。
「お前、そんなに急いで何しようとしてんだ?」
「!!!」
考えがバレている。
別に隠しているわけでもないのに、嘘をついた事がバレたような罪悪感。
いつもと同じような静な口調に攻められて責められている気分。ヒュウイの事が好きだと、も彼自身も知っているだけに、気まずい沈黙が降りた。