第10章 変化
「……っ」
恐怖がまざまざと蘇る。
ようやく落ち着きかけていた気持ちが再びざわつき始める。
ただ一つ違うのは、相手への想い。
嬉しさと恐怖とが混在し、はただ動けずにいた。
「怖いか?」
ヒュウイはの頬に手を添える。
一見穏やかで優しげな笑みだが、その奥に狂気があることをは知っていた。
「……はい」
「そうか」
わかっているのにわざわざ聞いて、聞いても尚ヒュウイは手を滑らせる。
の顔を見ながら鎖骨を楽しそうに撫で、やがて顔をうずめた。
「!! やっ やめてくださ…」
ヒュウイは、の肌に唇が触れるか触れないかのところでぴたりと止まる。
「拒絶は許さない」
「でも……や…っ」
「うるせえな。黙れ」
ぎゅっと唇を肌に押し当てると、強く吸い付いた。
「やぁあっ……ぁ…」
の声がにじむ。
まるで殺されそうな声を上げる。ヒュウイは強く押し返す彼女の手を掴んだ。
紅く色づいた所をべろりと舐め、おかしそうにと目を合わせる。
「はっ…おめぇのその声、いつ聞いてもたまんねえよ。わかっててやってんのか?」
相手の目しか見えないくらい、顔を近づける。
の翡翠色をした瞳はゆらゆらと揺れて。ヒュウイの全身に、ぞくりと寒気が走った。
ヒュウイは彼女の顎をつかみ、震える唇に自分の唇を近づける。
は必死に視線をそらそうとするが、当たり前のように敵わない。
「その声…狂う」
言った瞬間、塞ぐ。
の後ろ髪をくしゃくしゃに握って頭を自分に押し付け、唇を無造作に貪った。
「んふっ…ぅ…」
自分の事しか考えていない強欲な口づけ。
その気迫と存在感だけで、いつも殺されそうな気分になる。