第8章 髪切り
「ただでさえ起こされて苛ついてるってのに…。だから隣で寝かせろ。あいつが来ても俺はいないって言えよ」
「ほう…」
ひゅう、と冷たい風が吹いた気がした。
いつの間にか、ヒュウイの背後に青筋の立ったバージルが。
も気付かなかったところを見ると、気配を消して部屋に入って来たらしい。
バージルはヒュウイの首根っこを掴むと、据わった目で言った。
「俺から逃げ出し、更にの部屋に入り込むとはいい度胸だ。まだわかっていないようだな。ここは俺の家だ。俺がルールだ。俺に従え」
ヒュウイは服をつかむバージルの腕を思いっきり払う。
「嫌に決まってんだろ。ふざけんなよお前。
従うのはお前だ。俺に従え」
「………」
ビキッ と、更にバージルに青筋が走った。
ちらりとを見る。
一人息子でおだてはやされ育てられてきたヒュウイに、こんなにも堂々と張り合える人を見るのは初めてだ。は瞳を楽しそうに輝かせていた。
そんな彼女にバージルは言う。
「も何か言ってやれ」
「え……。あの、ヒュウイ様…やっぱり約束は守った方がいいかと…」
「絶対嫌だ」
つんと横を向くヒュウイ。
「でも私、ヒュウイ様の料理食べたいです。作っていただけませんか?」
「………」
そう尋ねると、ヒュウイは横目でをちらっと見て。
にやりと笑うと、ぐいっとに顔を寄せた。
「キスしてくれたらな」
「え…っ」
動揺するが、既に顔がくっつきそうなくらい近づけられた状態では避けようがなかった。
バージルが止める暇もなく…
ちゅ
ヒュウイがに唇を重ねる。