第8章 髪切り
朝。
朝陽の眩しさで目覚めたは、布団の中で丸くなりながら誰かの声を聞いた気がした。
「…………」
聞こえない。
誰?
知ってる声。懐かしい。
「」
ああ。
そうだ。この声は―――
「ヒュ…イ……さ…」
夢と現実の狭間で呟いて。
わずかに開いた瞳に、水晶のように透き通る薄紫が映った。
誰かの唇が開く。
「お前起きろ。寝すぎだぞ」
「………え…」
妙にリアルなその声。
しかも頬をつねられ、は一気に目が覚めた。
そして目を開けたの目前には、退屈そうに…ヒュウイが。
「えええっなん……!!」
「静かにしろ。あいつが来る」
素早く口をふさがれ、の声がくぐもる。
静かにしろと言う方が無理だ。
いつの間に侵入して、いつから布団の中にいたのだろう。起きた瞬間にこれでは。
そういえば…紳士的なバージルといて忘れていたが、ヒュウイはとことん自分勝手な性格だったな、と思い出す。
俺に行けない所はない。
俺にできない事はない。
その尊敬する程の自分勝手さは、まだ顕在らしい。
「何でこんなところにいるんですか…!」
声を小さくして言う。
彼は、少し眉間にしわを寄せてに顔を近づけた。
「その前に言う事は」
「…あ。すみません、おはようございます」
「ん。よしよし」
の頭を撫でるヒュウイ。
はむくれた。
「子供扱いしないでください!で、何で…」
「暇だからに決まってんだろ。あいつ、この俺に朝飯作らせようとしたんだぜ。身の程知らずにも程がある」
「え…」
―――バージル、もう起きてるんだ…
苛つくヒュウイの話を聞きながら思う。