第7章 決断
「」
バージルがいたわるように優しく、の顔を除き込む。
次第に気持ちの落ち着いてきていたは、彼を見上げた。
「何も考えず、正直に言ってくれ。お前はどうしたい」
「…私…」
は視線をさまよわせながら口ごもる。
自分の本心。飾らない、誤魔化さない、私の希望。
それを素直に取り上げるのは難しい。だが、苦ではなかった。
「私は…バージルが好きよ。ここにいるのは落ち着くし、楽しいし。ずっといたいと思う」
そう言ってから、ヒュウイを見る。
「でも、ヒュウイ様も好き」
「おいおい…」
「ごめんなさい。でも本当なの。私は人を好きになった事がないから、好意を持った人をみんな好きだと思ってしまう。それが人を惑わすとわかっていても」
口にすると驚くほど簡素な答えだった。
悩んでいたのが嘘のように、言葉の力で答えがひとつにまとまる。
私は、ひとつの答えから広がる連鎖反応の結果に、惑わされてただけだったのかもしれない。
顔を上げてちゃんと言える。
「私の方が聞きたい。私はどうしたらいいの?バージルとも一緒にいたいし、ヒュウイ様ともいたい」
バージルはそんなの姿を見て、安堵を覚えた。
いつもの強気が垣間見える言動。
りんと見据えているのが彼女らしい。
するとヒュウイがもたれていた身体を起こし、ゆっくりと歩み寄って来た。
土足のままの音がフローリングの床に響く。
「じゃあ俺ここに住む」
「…………何だと?」
音に気を取られていたバージルは、反応が遅れて思わず聞き返した。
―――今、冗談が聞こえたが…
しかしヒュウイはバージルに全く反応せず、ただを見つめて言う。
「丁度いいよな? 俺家出たから泊まるところないんだ。住ませろ」
また命令口調。
ビリッとバージルのこめかみが震える。
「立ち去れ。貴様を家に住まわせるなど死んでも御免だ」
「え……」
バージルの言葉に反応したのは、ヒュウイではなくだった。