第7章 決断
「そうは思っても家の事も捨てきれなくて、足止めもされて、時間だけが過ぎていった。俺がいなくなったら、跡取りはいなくなる。捨てるには、責任が大きかった。
だがな、これは俺の人生だぜ? どうして家の言いなりになる必要がある?」
そこで、はハッと思い当たった。
この自信に満ちたヒュウイならやりかねない事。
「まさか…」
言うと、ヒュウイはにやりと笑った。
「そのまさかだ。家を捨てて来た。…お前に会う為に」
「―――っ」
戦慄が走る。
そんな。そんな馬鹿な事が。
ヒュウイの家は、簡単に捨てて来れるほどのものではないのに。捨てることを許されるような家でもないのに。
それをこの男は。
「お前が離れてから新しい護衛もついたが、何でか思い出すのはお前の姿ばかりでな。考えるだけじゃ馬鹿みたいなんで、会いに来たんだ」
本当に
本当にそれだけで、家を―――
自分の為に、という嬉しさよりも強く驚きが残る。
しかし疑問は感じなかった。
もしもの事があればいつかはやりそうだと思っていた事だった。
しかしまさか、それを私のためにやるとは。
「これで俺にはお前しかいない。来るよな?」
「おい。貴様」
ずっと話を聞いていたバージルは、たまらず口を挟んだ。
「それ以上を口説いてくれるな」
「何だよ。関係ないだろう」
「関係ないがが惑う。無理強いもやめろ。苦しませたくない」
その気持は痛いほどに伝わっていた。
抱き締める力を緩めるも、決して離さない腕がそれを物語っていた。