第7章 決断
「だめ?」
「……っ 部屋がない」
その視線にたじろぎ、嘘の言い訳をする。
しかしわずかに視線が泳いだのを、は見逃さなかった。
しかしが口を開く前に…
「気にすんな。俺、の部屋に泊まるから大丈夫」
「え!?」
ヒュウイが眉をしかめた。
すごむようにに顔を近づける。
「えって何だよ。俺達、一つ屋根の下で同じ部屋の中で暮らした仲だろ?」
「なっ……」
「ちっ違うバージル! ひとつ屋根の下はそうだけど同じ部屋じゃないから!」
バージルはめまいがして額に手を当てた。
俺が嫌いでも、が好いているのだ。気に食わないが、の命を狙うような危険な男でもない事は確か。
承諾するしかないのか…
「………」
ふう、とバージルは息をついた。
顔を覆ったまま、諦めたように言う。
「…俺の隣の部屋が空いている」
「俺の部屋は俺が決める」
「駄目だ。この家にいる以上は俺に従ってもらおう」
するとヒュウイは、そこでようやくバージルに視線を合わせた。
「俺に指図するとはいい度胸だ。俺を誰だと思ってる?」
「家は捨てたんだろう。ならば今のお前はただの一般人だ。
家がない当たり、乞食か」
ビキッとヒュウイに青筋が立つ。
「…こいつ殺せ」
「いや、です…」
が戸惑いながら即座に拒否する。
まだ命令を拒否するという事に慣れていないのか、怯えたような顔をしていた。
しかし家柄がもう関係ないのはヒュウイもわかっているようで、殺しだけは無理強いをしない。
「お前とは仲良くやれそうだな」
「気が合うな。俺もだ」
二人は睨み合い火花を散らす。
はそっと息をついた。
しかしその顔には、今までにない笑顔があった。
結局からの頼みも加わって、ヒュウイの部屋はバージルの部屋の隣になる。
それからバージル宅には、毎日怒号が響き渡ることになった。