第7章 決断
「俺は…の髪が好きだぞ」
「…っ うん……」
「綺麗な紅だ」
「……ぅ…っ」
涙が止まらない。
どうしてそんなことを言ってくれるの?
バージルの身体を掻き抱く。
こんなに涙を流したのは、思えば久しぶりで。
髪を誉められたのは
好きだと言われたのは
初めてだった。
「…いい加減離れろよ」
ぼそっとヒュウイが言った。
だるそうに壁にもたれ、頬杖をついている。まるで、飽きたと言わんばかりに。気に食わないと言わんばかりに。
バージルはヒュウイをぎっと睨みつける。
「貴様なぞには渡さん。泣かせるなど論外だ」
「や。今泣いてんのはどっちかっつーとお前のせいだ」
「黙れ」
怒りしか湧いてこない。
半ば八つ当たりも入っているのかもしれない。
こんなに悩む羽目になってもなお、はヒュウイを気にかけているのかと思うと、悔しくて―――
「よぉ」
ヒュウイがを呼んだ。
はびくりと震える。
そっと、恐る恐る顔を動かすと、不敵とも取れる少し微笑んだ顔が見えた。
「俺が今まで、どうしてお前を見つけられなかったかわかるか?その気になりゃすぐに見つけられたんだ。人海戦術でもなんでも、打つ手はいくらでもあった。
だが、俺は見つけられなかった。見つけなかった」
バージルがいるおかげか、恐怖はあまり感じない。
力強い手に触れられている限り、恐怖は無いように思えた。
はじっと耳を傾ける。ヒュウイが自分から自分の事を話すなんて、今までになかったから。
「しがらみってやつだ。去る者は追うなと、家を離れるなと言われていた。従順でないなら側に置くなと。だが俺は嫌だった。生涯最高の護衛はお前だけだと思ってた。
今もだ」
「…………」